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少女マンガの繁栄と衰退と…復活…?Part 3

 さて、前回や前々回、私が少女マンガにハマるきっかけや読者の調査の話をしたけど、実は大学院生をやりながら、仕事として日本のマンガの英訳もやっていたんだよね。神戸で調査している間にも「電子メール」という、最先端テクノロジー(笑)を使って翻訳原稿をアメリカに送ってた。ばぶりーだったのよ。ナウいギャルだったのよ。

しらないの!?ナウいギャルはここんとこをかりあげるのよ!

 翻訳の仕事をやるようになったのは、イリノイ大学の大学院の2年目、まだ修士課程なのにJapanese Women in Literatureという授業を教える羽目になって(!)、その授業を受けているハーフの男の子にViz Comics(現在のViz Media LLC)という、日本マンガの英訳を出している出版社の存在を教えてもらった。ダメ元で私が授業用に翻訳した萩尾望都先生の「ポーの一族」シリーズの短編(「はるかな国の花や小鳥」)を送ってみたら、なんとも簡単に雇ってもらえた!

 Vizでの仕事の話をする前にちょっとした余談。そのハーフの学生に誘われて、イリノイ大学のAnime Clubに一度だけお邪魔したことがある。今では日本のアニメ好きのためのサークルがない大学なんて、アメリカにないんじゃないかと思うぐらい普及しているけど、当時はめちゃくちゃマイナーだったんだよね。で、その日は日本のアニメの上映会でした。VHSテープで、とにかくコピーのコピーのコピー(言うまでもないが、違法コピー)だから、画質も音質も、ほんとひどかった。字幕がない上、どうやらそのサークルには日本語がちゃんと分かる人は一人もいないみたいだった。なのに、みんな真剣に観てる。笑える場面になると私一人で笑っちゃうから、「ん?これは、通訳した方がいい?」と脳内葛藤して、中途半端に通訳を始めましたよ。彼らの反応想像つきます?みんな「じ〜ん」と感動して聞いてくれてましたよ、私の同時通訳。彼らにとっては、私の通訳がなんとも贅沢なサービスだったらしい!!。どう見ても私を崇めるような目で見てたよ!ところが、このサークルのメンバー、社交性に欠けててね、私に何と話しかけて良いのか分からなかったみたいで、ほとんど会話せずに私は上映会を後にしたのでした。

 その時、私は思った。「ヲタクって、世界のどこに行っても不器用なものなのね」と。

 話を戻そう。

 時は1989年。日本のマンガはアジアではよく売れるけど、欧米ではまったく知られてない。皆無。ナッシング。

 「Manga?あ、知ってる!イタリア語で『召し上がれ』という意味でしょ?」

 「それを言うならmangiaでしょうが」

 (👆実際にあった会話。)

 MANGA英訳黎明期のこの頃は、とにかく興味を持ってもらうために、どストレートにアメリカでウケそうなsamuraiもの(『子連れ狼』)やninjaもの(『カムイ外伝』)を英訳してみたり、アメコミ専門店で売ってもらうためにホッチキスで止めた冊子形式で出してみたり、一番必死だった頃なんて白黒のマンガに色を塗ってみたりするような、そんな切ない涙なしでは語れない時代だったのです。そしてそんな時代に、Vizは頑張っていたのである。

 Vizはカリフォルニア大学バークレー校を中退した二人の日本人が立ち上げた、小学館の事実上の子会社だった。私が雇われたのは、ちょうど会社がリストラを敢行して、正社員は3人しかいなかったし、私を含めて他の人はみんなフリーランス。1990年から1999年まで、私はVizで『風の谷のナウシカ』『らんま1/2』『銃夢』『スプリガン』など数々の英訳をこなしました。(懐かしい作品ばかっりでしょ?)。その頃の英訳の仕事で一番誇りに思っているのは、「日本少女マンガ」の英訳出版を世界で初めて(大げさと言わないで)私が手がけたこと!その頃のアメリカでは、「マンガはイケてない男の子が読むもの」という偏見が強くて、出版社も女の子向けのマンガが売れるとは思ってなかったんだよね。でも、少女漫画をアメリカに持って行きたかった私は逆風にめげず、Vizにしつこく、それはしつこく「少女マンガやろうよ少女マンガやろう」と言い続けた(笑)。いや、ほんと執拗に食い下がったよ。そのおかげで、西炯子先生の短編色々、萩尾望都先生の『11人いる!』『A-A'』、そして吉田秋生先生の『BANANA FISH』を英訳出版することができました。これほんと、ちょっとすごいことだった!今までのアメリカでのマンガの在り方に、殴り込みかけてるみたいなもんだったしね!

 また、そのうち90年代の英訳マンガの事情や歴史、そして「日本少女マンガ宣教師第1号」として私の布教活動(笑)について詳しく紹介しよう。

 さて、ここまでは「まえがき」(え?そうなの?って思ったでしょ?)だったけど、次回は「少女マンガって、どこから来たの?」、つまり少女マンガの歴史の話、Part 1へ。

 お楽しみに!

©️2018 Rachel Matt Thorn

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